2025年5月14日
前回のコラム「インプラントの歴史①」では、インプラントのはじまりについてお話ししました。今回はその続きです。
チタンという金属が骨としっかり結びつくという現象を発見したのが、スウェーデンのブローネマルク博士です。この発見が、インプラントの歴史に大きな影響を与えることになります。
では、なぜ博士はこの現象を「歯の治療」に応用しようと思ったのでしょうか?
それは、私たちの体のほとんどが皮膚で覆われているのに対して、口の中では「歯」という硬いもの(硬い組織)が直接外に出ているからだと考えられています。つまり、歯は体の中でも特別な存在なのです。
博士はこのチタンと骨が結びつく仕組みを、あごの骨が弱くて歯が数本しか残っていなかったある男性の治療に応用しました。そしてその治療は見事に成功しました。これが、今のインプラント治療の基本の考え方になっています。
この発見と、それを歯科治療に活かしたことは、歯科医療の世界にとってまさに大きな転機となりました。
それまでのインプラントには、サファイアや金、コバルトクロム合金などの素材が使われていましたが、博士の発見以降、「インプラント=チタン」という考え方が世界中に広まりました。
さらに時代とともに、「歯がなくなっても噛めるようになる」ことに加え、「見た目も美しくしたい」というニーズが高まってきました。
インプラント治療では、あごの骨の量がとても大切です。そのため、骨を再生する治療法や、骨を移植する技術などが発展し、インプラントの技術もどんどん進化しています。
そして最近では、これまで大きな課題だった「治療にかかる時間」を短くする取り組みも進んでいます。
また、インプラントを入れたあとの生活が、トラブルなく快適に続くようにすることにも注目が集まっています。治療が終わったあとも、しっかりとサポートすることがとても大切になってきているのです。
これまでの研究者たちのすばらしい発見をもとに、これからもインプラント治療は進化を続けます。そして私たち歯科医療に関わる者は、より高い技術と長持ちする治療で、患者さんの願いに応えていきたいと考えています。