2025年5月17日
お口の中はとっても繊細な場所です。たとえば髪の毛が1本入っただけでも「なんか変だな」と違和感を感じますし、歯と歯の間に食べ物がはさまったときには、すぐに気づきますよね。
そんなデリケートなお口の中ですが、歯科では「つめ物」や「かぶせ物」を作るときに「型取り(かたどり)」という作業を行います。「あっ、あれかも!」とピンときた方もいらっしゃるかもしれません。そうです、あのちょっとネバっとした材料を使って、お口の中に入れるあの工程です。少し苦手な方も多いですよね。
この型取りのことを、専門的には「印象採得(いんしょうさいとく)」といいます。最近では、小さなカメラでお口の中をスキャンする「光学印象」という方法もありますが、それについてはまた別のコラムでご紹介しますね。
今回は、この「印象採得」について、少し詳しくお話しします。
印象採得は何のためにするの?
印象採得には、いくつかの目的があります:
つめ物・かぶせ物などの“補綴物(ほてつぶつ)”を作るため
歯並びや歯の向きを確認するため
歯ぐきや粘膜の形をチェックするため
噛み合わせの状態を確認するため
今回は、特に「つめ物・かぶせ物を作るための型取り」にしぼってお話しします。
よく使われる型取りの材料って?
歯科医院では、いくつかの材料を組み合わせて精密な型を取ります。代表的なものはこちらです:
● アルジネート
アルジネートは「アルギン酸ナトリウム」という成分でできていて、実は昆布やわかめの“ぬめり”のもとでもあります。食品や歯磨き粉、サプリメントなどにも使われていて、身体にやさしい素材です。
粉状になっているアルジネートを水と混ぜて使います。色はピンクやオレンジなど、歯科医院によってさまざまです。
● 寒天(かんてん)
あんみつなどのデザートにも使われる寒天。歯科では、型取り用として特別に作られた寒天を使います。こちらも色や種類が豊富です。
● 石こう(せっこう)
型取りが終わったら、その型に石こうを流し込んで、お口の模型を作ります。この模型をもとに、ピッタリ合うつめ物やかぶせ物を作るのです。
小さなズレも大きな違いに
お口の中はとても繊細なので、ほんのわずかなズレも違和感やトラブルにつながってしまいます。たとえば、型取りの時点で材料の混ぜ方にムラがあったり、石こうが正確に流されていなかったりすると、できあがったつめ物がピッタリ合わないことも…。
私たちかわむら歯科では、そうしたズレが起きないように、以下のような工夫をしています:
アルジネートは自動練和機を使い、毎回同じ比率で練り上げて安定した品質を保っています
寒天は高品質(ちょっと高価なもの)を使用し、細部まで正確に型が取れるようにしています
石こうも変形が少ない、精度の高いものを使用しています
こうした見えないところの丁寧な仕事が、しっかりとフィットする補綴物をつくることにつながり、結果的に患者さんの大切な歯を長持ちさせることにもつながります。
もし、型が合わないまま無理に装着してしまうと、その部分からまた虫歯になることもあるんです。
最後に
今回のお話は、ふだん患者さんからは見えにくい「歯科医院の裏側」の部分かもしれません。でも、こういった細かい工程にも手を抜かず、丁寧に取り組むことで、皆さまに安心して治療を受けていただけると私たちは考えています。
「型取り、ちょっと苦手かも…」という方も、どんなことが行われているか少しでも知っていただけたら、きっと気持ちも楽になるはずです。気になることがあれば、いつでもお気軽にご相談くださいね。