2026年3月16日

歯の根に膿がたまると、歯茎が腫れたり噛むときに痛みを感じたりします。
「根管治療で膿を出す」と聞いて、不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、膿を排出することは、歯を残すために必要な治療の一部です。この記事では、歯の根に膿がたまる原因から根管治療で膿を出す理由、具体的な治療方法まで詳しく解説します。
サイナストラクトや痛みなどの症状、排膿経路の作り方など、根管治療の基礎知識を分かりやすくお伝えします。

歯茎の白いできものは放置しても大丈夫?変化から考える判断ポイントを解説
歯茎に白いできものができると「放置しても大丈夫なのか」と不安になる方も多いでしょう。本記事では、歯茎に白いできものができる主な原因や、受診を検討すべき変化のサイン、歯科医院での治療についてわかりやすく解説します。
歯の根に膿がたまる原因とは
歯の根に膿がたまるのは、細菌感染が進行しているためです。
歯の内部には「歯髄(しずい)」という神経や血管が通る部分があります。虫歯の進行や歯の損傷によって細菌が入り込むと、感染が発生します。体は細菌と戦うために免疫反応を起こし、その結果として膿が溜まるのです。

重度の虫歯による感染
虫歯が進行して歯髄にまで達すると、歯髄炎が起こります。
継続する痛みやズキズキとした痛みを伴うことが多く、この状態を放置すると歯髄が死んでしまいます。神経が壊死した状態のまま放置すると腐敗が進み、細菌が繁殖して歯槽骨にまで炎症が広がります。
細菌が歯の根に達すると、歯と歯槽骨の間にある歯根膜に炎症が広がって「根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)」と呼ばれる状態になります。
根尖性歯周炎は、過去に根管治療で神経を取った歯で起こることのほうが頻度として多いといえます。
過去の根管治療の不完全さ
根管治療を受けた後の歯でも、根管内に細菌が進入すると再び炎症が起こります。
根管内部の神経に取り残しがあったり、治療のために開けた穴を塞いだ修復材料のつなぎ目から細菌が入ったりすると、再び感染が起こります。根管は複雑な形状であるうえ、歯によっては数本に分岐しているため、治療時に細菌や感染組織が完全に除去されなかった場合、治療後も炎症が残り、膿が出る可能性があります。
特に、根管が細く曲がっていたり、石灰化沈着によりほとんど根管が塞がっていることもあります。その場合も、根管の中を綺麗に掃除する清掃器具や消毒の薬剤が行き届かず、根管の奥にいる細菌を殺菌できないことがあります。
歯の破折による細菌侵入
スポーツや事故で歯に衝撃を受けて歯が折れたり割れたりすることも、歯の根に膿が溜まる原因になります。
特に、虫歯治療などで抜髄をした歯は通常の歯より脆くなり、少しの衝撃で破折しやすくなります。破折した部分から細菌が侵入して、歯の根を蝕むことがあります。また、歯が折れていなくても、歯をぶつけたことによる衝撃で神経が切断され、壊死することもあります。

歯の根に膿がたまったときの症状
歯の根の先に膿が溜まったときに現れる症状について解説します。
悪化すると強い痛みが続くようになることがありますが、疲れた時や免疫力が下がった時だけに症状が現れるケースも存在します。
歯茎の腫れと違和感
歯の根の先に膿が溜まったときの症状として、歯茎の持続的な違和感が挙げられます。
歯茎が腫れたり、歯茎を押すと痛みや不快感を生じたりすることもあります。また、入浴時や運動時など、体温が上がったときに歯茎がうずくような症状が出る場合もあります。免疫力が低下すると細菌に対する抵抗力が弱くなり、歯茎が腫れやすくなります。
悪化すると、顔が腫れるなど強い炎症を引き起こす場合もあります。
サイナストラクト(フィステル)の形成
サイナストラクト(フィステル)とは、歯の根の先にできるニキビのような膿の排出路のことです。
虫歯や外傷などで神経が壊死すると、歯の根の先に膿が溜まります。溜まった膿は行き場を失うため、膿を出すための排出口が形成されるのです。サイナストラクト(フィステル)は膿の排出が終われば消失しますが、再び膿が溜まると形成されることがあります。
触っても痛みはないため放置する方が多いですが、サイナストラクト(フィステル)ができているということは歯茎に膿が溜まっているサインといえます。
噛むときの痛みと違和感
歯と歯茎の周りには歯根膜という薄い膜があり、食べ物の硬さや柔らかさなどを感じ取っています。
歯の根の先に溜まった膿によって歯根膜に炎症が起きると、食べ物を食べたときに違和感や痛みが生じます。特に、硬いものを噛んだときや、特定の角度で咬合したときに痛みが生じることが多いです。
また、膿が溜まった状態で治療を受けずに放置すると、強い痛みに発展していきます。歯の神経が壊死すると一時的に痛みを感じなくなりますが、歯の根の先に膿が溜まると、ある日突然何もしなくてもズキズキとした痛みが生じることがあります。

根管治療で膿を出す理由と方法
根管治療で膿を排出する治療方法について、具体的なアプローチを解説します。
膿を出すことは、感染源を取り除き、歯を保存するために必要な処置です。
膿を排出する必要性
歯の根に膿が溜まっている状態は、細菌感染が進行していることを示しています。
膿を排出しないと、感染が周囲の歯や歯茎、さらには顎の骨にまで広がることがあります。感染が広がると治療がより難しくなり、他の健康な歯も影響を受けるリスクが高まります。このような状態まで進行すると、通常の根管治療では解決できず、外科的処置が必要になることがあります。
また、膿の排出を長期間放置すると、口腔内だけでなく全身への影響も考えられます。特に免疫力が低下している場合、細菌が血流を通じて体内に広がり、深刻な健康リスクを引き起こす可能性があります。
根管治療の具体的な流れ
根管治療では、まず麻酔を施して痛みを感じないようにします。
次に、歯を削る器具(切削器具)を使ってむし歯や被せ物を除去し、汚染された根管内の歯髄を露出させます。再治療の歯であれば、詰め物や土台もすべて取り外します。
その後、「ファイル」や「リーマー」という針のような専門器具を用いて、感染した歯髄を取り除いていきます。根管は一本の歯に対して複数本あり、前歯では1~2本、奥歯では3~4本に分岐しています。分岐した根管をそれぞれ拡大していく必要があります。
汚染された歯髄などを器具で除去した後、薬液によって化学的に洗浄します。また、空洞になった根管内に消毒薬を入れて仮の蓋をし、時間を置いて消毒します。この工程を症状がおさまるまで何度か行います。
根管がきれいに清掃、消毒され、症状の改善が認められれば、充填剤を緊密に詰める「根管充填(こんかんじゅうてん)」を行います。ガッタパーチャと呼ばれるゴム状の樹脂やMTAセメントで根管内をしっかりと無菌状態で封鎖し、細菌が再び侵入しないようにします。

マイクロスコープを用いた精密治療
根管治療で重要なのは精密性です。
縫い針程度の太さしかない根管内を掃除する治療であり、細かい処置の連続でミクロン単位の正確さが求められます。これまで根管内部の治療は、歯科医師の「経験」や「勘」を頼りに手探りで行っていましたが、マイクロスコープの登場により、小さなものを大きく拡大して、1つ1つの繊細な処置を目で見て確実にできるようになりました。
視野を20倍にまで拡大できる「マイクロスコープ」を導入することで、より精密で確実な根管治療が可能になります。従来と比較すると、圧倒的に精密で質の高い治療を行うことができます。
根管治療後も膿が止まらない場合の対処法
根管治療を受けた後に膿が止まらない場合、いくつかの原因が考えられます。
適切な対処法を取ることで、歯を保存できる可能性が高まります。
再根管治療の必要性
既に行った根管治療が不完全である場合、再度治療を行うことで感染を取り除くことが可能です。
特に、根管内に残存する細菌が原因の場合、再治療が有効とされています。治療時に取り除ききれなかった細菌が再び感染を引き起こし、膿が溜まることがあります。この場合、再度根管治療を行い、徹底的に清掃・消毒する必要があります。
また、根管の封鎖が不十分だと、再び細菌が侵入し感染を引き起こします。膿が溜まり続ける場合、再封鎖が必要になることがあります。

歯根端切除術などの外科的処置
通常の根管治療では回復が見込めない症例もあります。
たとえば、根管が細く(あるいは塞がっている)患部に器具が届かなかったり、亀裂があり密封が不可能であったりするケースです。このような場合は「歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)」などの外科的処置が検討されます。
歯根端切除術では、麻酔をしてから歯茎を切開し、機械で歯の根っこの先を切断し除去します。次いで歯の根っこにできた嚢胞を摘出し、根管の切断面から根管充填をMTAにて行い歯茎と縫合して終了します。病巣のある根の先を切り取ってしまう、いわば歯の命を救うための最後の手段です。
抗生物質の適切な使用
膿が溜まっている段階で急性の感染症が進行している場合、抗生物質が処方されることがあります。
これにより、感染が一時的に抑えられ、症状が軽減しますが、根本的な治療には再根管治療や外科的処置が必要です。顔や首の腫れ、発熱、リンパの腫れがあるときは、細菌が広範囲に広がっている可能性があり、抗生物質が必要になります。
ただし、抗生物質の乱用は避けた方がよく、耐性菌の問題から慎重に使用する必要があります。
根管治療の期間と通院回数
根管治療の期間と通院回数は、歯の状態によって異なります。

抜髄の場合
その歯に対して初めて根管治療を行う場合、「抜髄(ばつずい)」と呼ばれる処置が必要になります。
むし歯が神経にまで達して、ひどい歯髄炎の症状(自発痛、冷・温痛、咬合痛など)を起こしている場合は、歯髄(神経)を取り除く処置が必要です。歯髄炎の状態は、歯髄の細胞が生きていて免疫力を持っています。このため、歯髄にはほとんど細菌はいないと考えられています。
抜髄の段階で無菌的かつ丁寧な治療を行い、精密な土台や被せ物をセットできれば、高確率で根管内に細菌がいない状態を作り出すことが可能です。抜髄の場合は比較的短期間で終了し、治療回数は2~3回となります。
感染根管治療の場合
歯髄炎を放置していると、細菌によって歯髄の組織が殺されていきます。
こうなると、歯髄の細胞の免疫力も失われていくため、根管内に細菌がさらに増殖し、歯髄壊死や根尖性歯周炎などを引き起こします。すでに神経を取り除いた歯でも、根管内に細菌が進入すると、同じような状態になります。
「感染根管治療」は、根管の中の細菌や汚染物を取り除き無菌に近い状態にして、根の先にある炎症を抑えていく治療です。感染根管治療では根管内を清潔にするのに時間がかかるため、数回にわたって治療を行う必要があり、多ければ5~6回に及ぶこともあります。
1週間に1回程度治療(通院)するとして、治療期間は3~4週間くらいになるのが目安です。ただ、再発の場合や、根管の形状が複雑である場合には、これより長い期間を要することもあります。

根管治療後の歯を長持ちさせるために
根管治療を受けた後の歯は、適切なケアで長持ちさせることができます。
支台築造による歯の補強
抜髄や感染根管治療で神経を抜いた歯は、経年的に歯質が弱くなり、破折が起こりやすくなります。
そのため歯を金属や樹脂を用いて補強する「支台築造」を行います。その土台に被せ物を付け、歯の形態及び機能を回復させて根管治療は終了です。神経が残っている状態であれば麻酔は不可欠となりますが、再治療の歯であれば、詰め物や土台もすべて取り外します。
定期的なメンテナンスの重要性
根管治療後も、定期的なメンテナンスが重要です。
定期的に歯科医院でチェックを受け、歯や歯茎の状態を確認してもらうことで、再発を予防できます。日常的な口腔ケアも欠かせません。膿がたまっている状態で口腔内が不潔な状態だと、細菌が繁殖しやすく症状が悪化する恐れがあります。
まずは毎日の歯磨きを忘れず丁寧にすること、膿がたまっている患部を刺激しないよう、やわらかめの歯ブラシでやさしく磨くようにしてください。
早期発見・早期治療の大切さ
食事の際に違和感がある、強く噛むと痛いなど、症状が軽度なうちに治療を受けるのが理想です。
歯の根の先に膿が溜まる原因から根管治療で膿を出す理由、具体的な治療方法まで理解することで、適切なタイミングで治療を受けることができます。「眠れないほど歯が痛い」「歯を噛み合わせただけで痛い」など、強い症状が出る前に、早めに歯科医院を受診しましょう。
まとめ
歯の根に膿がたまるのは、細菌感染が進行しているサインです。
根管治療で膿を出すことは、感染源を取り除き、歯を保存するために必要な処置です。重度の虫歯、過去の根管治療の不完全さ、歯の破折などが原因で膿が溜まります。
サイナストラクトや歯茎の腫れ、噛むときの痛みなどの症状が現れたら、早めに歯科医院を受診することが大切です。
マイクロスコープや歯科用CTを用いた精密な根管治療により、歯を残せる可能性が高まります。根管治療後も膿が止まらない場合は、再根管治療や歯根端切除術などの外科的処置が必要になることがあります。
定期的なメンテナンスと適切な口腔ケアで、根管治療後の歯を長持ちさせることができます。
かわむら歯科では、マイクロスコープ、歯科用CT、ニッケルチタンファイルといった最新の設備と技術を導入し、より精密な根管治療を実現しています。重度のむし歯でお困りの方、根管治療についてご相談されたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
詳しくはかわむら歯科 根管治療のページをご覧ください。
著者情報
かわむら歯科 院長 河村 省吾

経歴
2005年3月 福岡県立明善高等学校理数科 卒業
2005年4月 九州大学歯学部 入学
2011年3月 九州大学歯学部 卒業
2011年4月 九州大学病院歯科医師臨床研修
2012年4月 医療法人瑞帆会むらおか歯科医院 勤務
2025年3月 かわむら歯科 開院
資格・所属学会
日本歯周病学会
経基臨塾会員
